今や世界中で30億人以上のユーザーを抱えるFacebook。SNSの代名詞ともいえるこの巨大企業は、実はわずか数人の大学生によってハーバード大学の寮で誕生しました。そのスタートアップストーリーには、数々の挑戦や決断、そして少しのスキャンダルも含まれています。
今回は、Facebookがどのようにして世界を変える存在になったのか、そのゼロイチエピソードを掘り下げていきます。
Facebookはどんな会社か
Facebookは、2004年に設立されたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の大手企業です。ユーザーはプロフィールを作成し、友人や家族、同僚とつながることができます。また、写真や動画の共有、メッセージの送受信、イベントの作成など、多彩な機能を提供しています。
現在では、Facebook以外にもInstagram、WhatsApp、Oculusといった人気プラットフォームを運営しており、広告やデジタルサービスを通じて莫大な収益を上げています。同社のミッションは「人々にコミュニティを築く力を与え、世界をより近づけること」。SNSを通じて情報の共有と交流を促進することで、社会全体のつながりを強化しています。
Facebookの創業者
Facebookを創業したのは、マーク・ザッカーバーグとその大学仲間たちです。
マーク・ザッカーバーグ
マーク・ザッカーバーグは1984年5月14日、アメリカ・ニューヨーク州のホワイト・プレーンズで生まれました。家族はユダヤ系アメリカ人で、父親は歯科医、母親は精神科医という比較的裕福かつ教育熱心な環境で育ちました。幼い頃から自宅には豊富な本やコンピュータが置かれており、学習に対して大変恵まれた環境でした。
幼い頃から本が好きで、加えて数学や科学への興味を持つ少年でした。ザッカーバーグは常に新しい知識を吸収することを好み、学習や研究に対して貪欲な姿勢を示していたといわれています。
ザッカーバーグは父親からコンピュータを与えられ、幼少期からプログラミングに親しむようになります。Atariのゲーム機などでも遊んでいましたが、ただ遊ぶだけではなく、ゲームの仕組みやプログラムの構造に興味を持ち、自らの手で改造や開発を試すほどの探究心を持っていました。
さらに本格的なプログラミング技術を身につけるため、家庭教師をつけてもらったり、独学でC++などのプログラミング言語を学びました。その成果もあって、中学~高校の頃には既にシンプルなアプリケーションを作り出せるほどのスキルを身につけていたといいます。
高校時代には、バージニア州のアドバンスド・プログラミングキャンプやコンテストに参加し、優れた成績を収めます。また、父親の歯科医院のために簡易コミュニケーションソフト「ZuckNet」を開発し、診療所と自宅間でリアルタイムにやり取りができるシステムを構築したというエピソードも有名です。
2002年、ザッカーバーグはエリートの集まる名門大学であるハーバード大学に進学し、コンピュータサイエンスと心理学を専攻することになります。高校時代からのプログラミングの腕や数学への関心をより専門的に深める絶好の環境でした。
その他の創業メンバー
ザッカーバーグとともにFacebookを立ち上げたのは、ダスティン・モスコヴィッツ、エドゥアルド・サベリン、アンドリュー・マコラム、クリス・ヒューズらです。特にサベリンは初期の資金提供者であり、モスコヴィッツは開発をサポートしました。このチームが、Facebookの初期成長を支える原動力となりました。
Facebookはどうやって生まれたのか
Facebookの原点となるアイデアは、ザッカーバーグがハーバード大学在学中に始めたサービス「Facemash」です。Facemashは、大学の学生写真を並べて「誰が魅力的か」を投票するというシンプルかつ物議を醸す内容でした。このサービスは瞬く間に学内で注目を集め、大学生の間で「もっと安全で自由に、学内の友人同士が繋がるサービス」を求める声が高まっていたことを示す結果となりました。
その流れを受けて、2004年にザッカーバーグは Facemash の反省を踏まえた新しいSNS「TheFacebook」を立ち上げます。このSNSは、ハーバード大学の学生が、自分のプロフィールを登録し、友人と繋がるためのプラットフォームとしてスタートしました。
当時は大学生同士が「学内限定のオンラインコミュニケーション」に特化したSNSを熱望していたこともあり、TheFacebookは急速に利用者を増やしていきました。その後、他の大学にもサービスを拡大し、ユーザー数が急上昇するタイミングで、「Facebook」という名前に変更されました。
創業資金をどうやって用意したのか
Facebookの初期段階では、ハーバード大学の同級生であり共同創業者でもあるエドゥアルド・サベリン(Eduardo Saverin)が主に財務面でプロジェクトを支えました。サベリンは大学在学中から株式投資などで一定の資産を形成しており、立ち上げ当初のサーバー費用やドメイン、開発環境の整備に必要な資金の多くを拠出しています。
サベリンは経済学に強みがあり、ビジネスの基礎知識を備えていました。ザッカーバーグがサービスの開発・運営を担う一方で、サベリンが財務面を担当することで、役割分担がうまく機能したといわれています。
スタートアップが外部から投資を受ける前に、創業者が自己資金を投入するケースは珍しくありません。自己資金を元手に始めることで、株式(持分)の大部分を創業者側が保持できる反面、個人としてのリスクは高まります。サベリンはそのリスクを承知のうえで、Facebookの将来性を信じて出資したと言われています。
その後、Napsterの共同創業者として知られるショーン・パーカーが、Facebookの将来性に強い可能性を感じ、当時まだ大学生だったザッカーバーグたちをシリコンバレーに呼び寄せました。
パーカーはシリコンバレーの投資家や起業家コミュニティに広いネットワークを持っており、Facebookを適切な投資家へとつなぐ“キーマン”となりました。
これがPayPalの共同創業者として著名なピーター・ティールによる50万ドル(当時にして約5000万円)の投資、さらにシリコンバレーの著名VCであるAccel Partnersからの約1270万ドル(当時約13億円)の投資へと繋がっていきます。
Facebook成功の秘密
実名登録による信頼性の確保
多くのSNSがニックネームやハンドルネームを基本にしていた中で、Facebookは「実名」の強みを最大限に活かしました。これにより、個人情報に対するリスクもありましたが、同時に「本当の友達同士が繋がる安心感」が一気に広まる要因となりました。
ネットワーク効果を活かした拡大戦略
大学のコミュニティ内で一気に普及したことで、その評判が他大学へ、さらには一般社会へと波及していきました。ある一定のコミュニティ内で「誰もが使う」状態を作り出すことで、新規ユーザーがより参入しやすい環境を生み出したのです。
CEOの強いビジョンと開発スピード
ザッカーバーグの「世界をよりつながった場所にする」というビジョンを実現するための大胆な開発投資と、ユーザーインターフェースの改善スピードは他SNSを圧倒していました。
買収によるサービス拡充
InstagramやWhatsAppなど、ユーザー基盤が異なる人気アプリを次々に買収し、プラットフォームとしての影響力をより一層強化しました。
まとめ
Facebookがハーバード大学の寮から生まれたSNSでありながら、わずか数年のうちに世界を席巻したのは、革新的なアイデアと「世界を変える」という大きなビジョン、そしてタイミングを逃さず資金を調達できたことが大きな要因でした。今や「Facebook」という名前は、SNSの代名詞とも言える存在です。その成功ストーリーには、スタートアップや企業を立ち上げたいと考える人にとって、多くの学びとヒントが詰まっています。
世界をつなぐプラットフォームを構築したFacebookの創業物語は、現代ビジネスにおいてもなお貴重な事例と言えるでしょう。もしあなたが新しいサービスを考えたり、起業やビジネスアイデアを温めていたりするのであれば、Facebookの成功の軌跡から学ぶことは多いはずです。
今後もFacebookのビジョンとサービスは進化し続けるでしょう。私たちの暮らしに大きく浸透したこのプラットフォームが、今後どのように形を変えていくのか、引き続き注目していきたいところです。